作業療法体験記 I氏
2004年6月27日、救急車で運ばれ救急病院のICUに入院。
右内頚動脈100%閉鎖。
右脳全体に広く梗塞が見られた。命を救う治療がなされ、命は助かった。
しかし、左半身麻痺となってしまった。
7月下旬リハビリの為に転院。本格的なリハビリが始まる。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士すべて揃っている病院だ。
その後、8年お世話になっている。
最初は立つことも出来ず、立つ練習から始め、車椅子⇒装具+杖⇒今では装具無し、また通常なら杖無しでも歩けるようになった。
リハビリを続けた成果である。
手の方も、家族には早いうちから左手は全廃(全く動かなくなること)と伝えられていたようだが、家族から私には伝えられず、私は頑張ってリハビリに励んだ。
全く動かない自分の左手。指を折りながら数えるおばあさんを見て心底羨ましかった。
作業療法では、新聞紙を千切ったり、輪っかを左から右に移動したり、重いものを片手で持ったり色々なことを行った。どれも今まで簡単に出来ていたことであった。
ビンのフタをあける練習が上手く行かず、そんな私を変だなぁと見る別の患者さんの視線を感じ(実際には自分が勝手にそう感じていただけだったのだが・・・)、担当の作業療法士の先生に「嫌だ。やりたくない。」と言い、しばらくその練習はしなかった。
時間を置くと、やはり出来るところまでやりきろうと言う思いが出てきた。今ではその練習のお陰で、自分でペットボトルのお茶等を買いフタをあけ飲んでいる。
なんて、素晴らしいことだろう。
リハビリ仲間に、ペットボトルのフタをあける事が出来ず困っていると言う話をよく聞く。
投げ出さず練習して出来るようになって良かったなあとつくづく思う。
あの時、私の心情を察し、しばらく間をおき練習を再開してくれた先生には感謝である。
毎日の地道なリハビリで、全く進歩がなく、滅入りそうな時もあったが、先生方が暖かく見守って下さり、目標などを設定してもらったりしてなんとか続けていると少しずつ進歩してきた。
目標も、「自分だけでトイレに行く」「自分だけで入浴する」等生活に密着する目標で、頑張って実現させたいと思うような目標であった。
また、今まで全く出来なかったことが突然出来るようになったこともある。
例えば、おかしの袋が自分で開けられたり、ご飯のお茶碗を急に持てたりした。
練習の成果が急にきた感じである。健康な人にはなんでもない出来て当たり前のことだが、私にとっては大変大きな嬉しいことであった。
今ではあれほど羨ましかった指を折ることも何とかできるようになった。
握力計で数値が出なかったものが、10数キロ出るようになった。
何かが出来ると自信が出てくる。自信があると、目標ややる気も出てくるものだ。
私と同じようにリハビリを日々頑張っている方は沢山いらっしゃる。
諦めずにこつこつ続けていけば少しずつではあるが良くなっていくし、もちろん現状維持も非常に大事だと思っている。
焦らず腐らず一歩一歩進んで行きたいと思う。他の人の進歩ややる気をみると、私も頑張りたいと思うし励みにもなる。私も他の人の励みになるように頑張りたいと思う。
リハビリ中の皆さん、これからもお互い頑張りましょう。先生方には色々な方法でリハビリをして頂く他に、話を聞いてもらう・聞かせてもらうという精神的なリハビリもしていただいていた。
これもまた感謝である。
先生方に教えていただいた「自分でできる事は自分でする!」を胸に、これからもリハビリと付き合っていきたいと思っている。