より豊かな作業療法の推進と公益活動に取り組んでいます

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私は、小さい頃から台所に立っているお母さんが大好きで、いつも隣で見ていた。
いつものように、トントンとまな板で食材を切る音、おみその優しい香り。
私の大好きなおみそ汁。
素朴だけど、なんかあったかくて、ほっとする味。
そんなある日、私に子供用の包丁とまな板を買って来てくれた。
いつも隣にいる私をみて、教えようと思ったのかな。
危なそうに包丁を握りしめ、緊張した顔で、食材を切っていく。
不恰好に切れた食材達。見上げると、お母さんの優しい笑顔 。
「うまく切れたね。」と優しい声が響く。
満足げな私。
いつもにまして、美味く感じたおみそ汁。
それから、年々、私も台所に立つ回数も減っていった。

時が流れ、私が高校生になったある日、母は入院した。
脳の病気で、右手がうまく動かなくなってしまった。
お見舞に行くと、作業療法士と書いてあるリハビリの人と話していた。
どんなリハビリをするのかなぁーと見学していると、おみそ汁を作る計画を立てていた。
右手が動かないのにできるのかな、と正直思った。
すると、作業療法のリハビリの人から「次の日曜日のお昼に、またリハビリ室に来て下さ­い。」とお願いされた。

日曜になり、病院に行くと、お母さんがリハビリ室の台所に立って真剣な顔をしていた。
左手に包丁を持ち、釘のささったまな板で食材を切っていた。
野菜を釘にさせば野菜が動かないので、左手だけでも野菜を切ることができる。
ちょっぴり時間はかかるが、おみそ汁ができた。
このおみその優しい香り、幼い頃の大好きな台所のお母さんの姿を思い出した。
「一緒に食べましょう」と作業療法のリハビリの人が声をかけてくれた。
「おいしいね。」
おみそ汁は、いつもにましてあったかくて優しいおみそ汁だった。

そして退院の日。
私はお母さんに釘のささった新しいまな板をプレゼントした。
「また一緒におみそ汁作ろうね。お母さん。」